「京都未来づくの提案事業」についての
府職労行政対策部の見解


 2004年4月、当局は、きょうと未来づくり提案事業と政策ベンチャー事業を内容とする「庁内ベンチャー事業」を実施したいと提示してきました。政策ベンチャー事業については、平成12年度から14年度に実施された「ヤングブレーン・ネットワーク21事業」を平成15年度に引き継いだものです。事業の内容は「府政の課題について、若手職員が民間企業職員等と意見交換する中で研究、成果を提案」するもので、目的として「若手職員の府政への参画意識の高揚、政策形成能力の向上」「民間企業等職員との広範な人的ネットワークづくり」「組織の活性化、意識改革」の3つを掲げています。きょうと未来づくり提案事業は16年度の新規事業です。
 きょうと未来づくり提案事業は「府政が直面する課題について、所属する部局等に関わらず、職員自らがその解決策・実施策を企画・提案し、優秀なものについては、必要な組織上・財政上の措置を講じて事業の具体化を図る」としています。
 この実施要領で、事業を行う目的として、@これまで当然の前提としてきたルールや慣行にとらわれない、新しいルールや取組を打ち出す職員の発想を引き出し、職員の府政に対する積極的な参画意識と起業家精神を涵養する、A優れた提案を高く評価する土壌を創出する、B個々の職員及び府庁組織全体の活性化、意識改革を図ることを掲げています。
 この「きょうと未来づくり提案事業」などには重大な問題があります。「きょうと未来づくり提案事業」を含む「庁内ベンチャー事業」の実施を取りやめるよう求めるものです。

(1)組織的な混乱をまねく制度
 

 所属する部局等に関わらず、府政が直面する課題についての解決策・実施策を企画・提案し、優秀なものについては、必要な組織上・財政上の措置を講じて事業の具体化を図ることとしていますが、これは大きな問題です。「所属する部局等に関わらず」としていることは、本来担当業務に専念しなければならない職員に対して、部局を超えた具局を超えた内容似ついて提案させることであり、組織的な混乱をまねくことは明らかです。
 また、職員は、提案書の作成、企画書の作成、計画書の作成、事業の実施に向けた準備を行うことになっていますが、職員には、その人の所属する部局・職場があり、具体的な仕事を行っています。この実態を無視して、特定の個人に関し、このような組織上・財政上の措置を講じて事業の具体化を図ることも、職場に混乱をもたらします。

(2)成果のみ重視する意識改革は問題

 この事業は職員の意識改革も強調しています。行革ナビのもととなった懇話会の「新たな行財政改革に向けた提言」は、意識改革について、「透明性」「機動性」「成果志向」の3つの視点をもって業務を遂行するよう職員の意識改革を行う必要があるとし、とりわけ「成果志向」を重視しています。この事業がうたう意識改革は、「成果志向」と結びついたものです。しかし、行政の評価をすべて成果からだけ評価してよいものなのか、大いに検討する必要があります。住民福祉の向上、住民の人権の実現の視点から、考える必要があります。成果のみを重視する意識改革には問題があるといわざるをえません。
 
(3)すでに破綻している提案制度のむしかえし

 今回の制度は提案制度の一つといえます。提案制度は、70年〜80年代すでに自治体職場では破綻しています。京都府も84年夏に、府職労の反対を無視し、提案制度を導入しました。提案制度は、当時の国の臨調路線にもとづき、公務員制度に能力主義・成績主義を導入していく重要な手段と位置づけられていました。府職労は、提案の奨励、恣意的な提案推進員の任命と提案推進員による提案強制、全体の奉仕者として、府民本位の府政をめざす職員の良心をふみにじる選別に基づく表彰などが行われる危険性を指摘し、職員の中に差別と分断、競争を持ち込むものであるとして、実施の取りやめをを求めました。
当局も数年間実施しただけでやめてしまいました。

(4)まったく示されない審査基準

 今回の提案事業には、第1次、第2次、最終と3回の選考があります。しかし、審査基準は何も示されていません。審査者も一部の特定の幹部職制で構成されており、当局の恣意的な判断がまかり通る危険性が指摘できます。
 また、職員から提出された提案書、企画書、計画書などは全職員に公開されるのでしょうか。実施要領では何もふれていません。当局に優秀と認められたものだけが公表されるのでしょうか。そうであれば、密室で職員の知らないところで処理されることになります。これでは、職員は安心して提案することはできません。全容の公表は不可欠です。 

5)府政が直面する課題についての解決策・実施策を企画・提案するのは職場の集団的力

 当局が、個々の職員及び府庁組織全体の活性化をはかるために、最大限の力を注がなければならないことは、職場における課・係(室・担当)の民主的な討論と民主的な運営を重視し、すべての職員の英知を結集して住民本位の府政の運営を進めることです。このことなくして、職員の英知・創意の発揮は強化されません。職員の英知は、第一義的には、現在いる職場、行っている仕事に関して発揮されるべきです。この視点からも、職員の希望に添った人事異動が大切です。
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