雨宮処凛の世直し随想

 

「女性の貧困」の断面
 年末年始、各地の越冬現場を巡った。

 役所が閉まる期間、ホームレス状態の人々に炊き出しや医療相談、生活相談を提供する取り組みだ。横浜の寿町、渋谷・美竹公園、池袋、山谷などの炊き出しには、多くの人が集まっていた。若い人も多かった。

 そんな現場で、A子さんと会った。小さい頃から父親に性的虐待を受けていて、それが耐えられずに家出し、歌舞伎町で売春しながら生き延びてきたという女性だ。彼女は、各地の越冬現場で体調が悪い人や女性にシェルターを提供する「ふとんで年越しプロジェクト」につながり、役所が開くまでホテルに滞在できることになった。その後のことは支援者と相談しながら決めていくのだという。

 そんな彼女に「友人」を紹介された。深夜の歌舞伎町で路上に座りこむ5人ほどの女の子たち。みんなネットカフェに寝泊りしながら体を売っているのだという。もう20年もそんな生活を続ける30代の女性もいれば、知的障害と思われる女性もいた。2週間前、出産したばかりという女性もいた。そんな彼女たちと路上にいると、次々と男性が声をかけてくる。私が取材という立場だとわかると、悪びれる様子もなく、「ここはデブ専ストリートで、みんなウリやってて」などと解説を始める。そんな男性に、実に自然にもたれかかり、甘える女の子たち。

 風俗産業などが、「女性の貧困」の一種のセーフティーネットになってしまっている現実は知っていた。A子さんの「ここに来ると安心するの」という言葉に、なんと返したらいいのかわからなかった。〈連合通信〉