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2015年 9月08日

「強行採決やめて」
派遣法「改正」案

当事者が議員要請と会見

 労働者派遣法「改正」案が、9月8日に参議院で強行採決される可能性が高まっている。7日には、派遣労働者らが「当事者の声を聴かずに強行採決することは許されない」として、塩崎恭久厚生労働大臣や国会議員に要請を行った。元派遣労働者の廣瀬明美さん(40)は「派遣労働者が参加した形で法案を作り直してほしい」と訴えている。

 議員要請では、法案の問題点として(1)10月1日施行の「みなし雇用制度」が形がい化する(2)女性の派遣労働者がますます産休・育休を取りづらくなる(3)周知期間が短く国民に混乱をきたす――の3点を指摘し、即時撤廃を求めた。ある与党議員の秘書は「法案の作成過程で派遣労働者が参加していないのは不思議でならない」と話していた。

 同日記者会見が開かれた。専門業務を偽装した違法状態で働いていた元派遣労働者の50代女性は、「弱い立場の労働者を使い捨てにする違法派遣が合法化されてしまう。現場の声を聴いた上で法改定してほしい」と訴えた。

 日雇い派遣で差別的な処遇を強いられていたという30代女性は「『正社員化につながる』などのウソの宣伝はやめてほしい。派遣労働者は(今回の法『改正』を)望んでいません」と述べた。

違法企業免罪へ必死なりふり構わぬ安倍政権〈参院での派遣法案審議から〉

 労働者派遣法「改正」案の狙いは、違法企業の免罪にあることが、9月3日の参院厚生労働委員会の審議でより明白となりました。「改正」法の施行日を「みなし雇用制度」の施行(10月1日)直前の9月30日にしたこと。さらに、違法派遣に同制度を適用させないため、法律解釈のねじ曲げまで行っています。

▼狙いは専門業務偽装

 みなし制度は、違法派遣があった派遣先と派遣労働者との雇用関係をほぼ自動的に成立させる強力な規定です。2012年に民主、自民、公明の三党協議の末に、新設されました。

 対象となるのは、(1)派遣期間制限違反(2)偽装請負(3)禁止業務への派遣(4)無許可派遣――の4つ。最も多いとみられるのが、(1)の期間制限違反で、「専門業務偽装」の事案です。現行法上、専門業務には派遣期間の制約がありません。しかし、専門業務ではない仕事が一定割合を超える場合、原則1年の派遣期間制限を受けることになります。

 多くの職場では、契約は専門業務でも、派遣労働者にはいろんな仕事を任せているのが実情。1年を超えてこのように働いている人が直接雇用の対象になります。法案が成立すると、専門業務という枠組みがなくなるため、企業は今まで通りの働かせ方を続けても、みなし制度は適用されなくて済むのです。いわば、違法派遣の合法化です。

▼あまりにも空虚な説明

 みなし制度に対する二重の仕掛けも講じました。派遣契約期間が「改正」法の施行日をまたぐ場合の違法派遣にどう対処するかという問題です(図(1))。

 「改正」法施行前に結んだ契約ですから、当然現行法の期間制限を受け、施行日以降も違法派遣となります。しかし、政府は現行法の「みなし雇用制度」は適用させない方針です。

 10月以降直接雇用になるはずだった労働者の期待は裏切られます。この期待について政府は9月3日、みなし制度が未施行であることを理由に「保護を行うかどうかは政策判断」とする厚労省と内閣法制局の見解を説明。そのうえで、派遣先による「直接雇用申し込み義務」という古い規定が現行法にあるので、「労働者の保護は図られている」との見解を示しました。

 これに対し、自由法曹団は「派遣労働者の確定的権利、利益を奪うことは到底許されない」「厚労省、内閣法制局の見解は全く誤っている」と批判します。

 みなし制度の代替とされた「申し込み義務」は、みなし制度と違って裁判で労働者の権利が認められる規定ではありません。あくまで行政指導で是正する仕組みです。肝心の労働行政は直接雇用の指導には極めて及び腰。だからこそ08年の派遣村を経て、みなし制度が新設されました。

 実際、これまで申し込み義務による指導件数は年間1件か0件(図(2))。一方、みなし制度が適用されるとみられる事例は期間制限違反だけで年200件前後もあります。「労働者保護」と言うにはあまりにも空虚です。

▼狙いは、違法企業の免罪

 みなし制度を使わせたくないという意図は、安倍首相の答弁(3日・参院厚労委員会)にも見られます。
 「改正せずに10月1日を迎えれば、派遣先において意図せず違法派遣を受け入れた状態となって、みなし制度が適用されてしまう可能性があり、これを回避するための雇い止めなどが生じる可能性がある」
 みなし制度の施行までには法改正から3年もの猶予期間がありました。いまだに違法を是正せず脱法を図る企業を、しっかり規制するのが本来の国の役割ではないでしょうか。首相の説明は本末転倒です。
 「改正」案の狙いが違法企業の免罪にあることがいよいよ明白となりました。 (連合通信)

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