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2016年07月26日

格差解消へ道筋示せ
最賃引き上げ

3%アップだけでは不十分

 今年度の最低賃金改定の目安答申を前に、7月13日に開かれた経済財政諮問会議では民間議員から「何としても3%、24円程度の引き上げを実現すべき」との意見が出され、安倍首相も最大限の努力を払うよう求めました。公約を実行するのは当然ですが、全国加重平均1000円の到達時期は不明確で、地域間格差解消の対策はなく、中小零細企業への経営対策も十分ではありません。

 諮問会議では、榊原定征経団連会長ら民間議員4人が「可処分所得の拡大に向けて1000円に引き上げていくべき」とする文書を提出。首相も賛同しました。背景には、個人消費の低迷が続く「アベノミクス」の失敗があります。失政の是正は必要ですが、最賃を経済政策や、政権基盤強化の道具としか見ていないところに限界とごまかしがあります。

 まず、全国平均1000円の到達時期目標を明確にしていません。毎年3%程度引き上げるというだけです。しかも実行を担保するものはなく、年々の上げ幅は政府のさじ加減次第という余地を残しています。

 民主党政権初期の政労使合意(2010年)では到達時期を明確にしていました。「できる限り早期に全国最低800円を確保」「2020年までに全国平均1000円をめざす」という内容です。3年ごとに検証しながら、さまざまな政策を発動して到達をめざす枠組みでしたが、翌年の東日本大震災、その後の政権の失速で停滞を余儀なくされ、安倍政権で完全に無視されました。そして昨年秋に政府が突然、「1000円」を言い出したのです。

▼急げ全国最低800円

 民主党政権時の合意の大きな柱の一つは、地域間格差の解消、最賃低位県の底上げでした。「早期に全国最低800円」はおおむね3年の目標。当時629円だった最も低い最賃を、3年程度で800円にするという構想でした。

 もしこの通りに進んでいたら、最大で時給214円という極端な地域間格差は生じなかったでしょう。現在東京が907円ですから、格差は100円以内に収まっている計算です。

 厚労省の見解では、この合意はまだ生きています。しかし、政府からは地域間格差を解消しようという声は一切聞こえてきません。今後一律3%引き上げられるならば、格差はさらに広がってしまいます。

 コンビニやスーパー、運輸、交通、看護、介護、保育など全国同じ仕事をしながら、時給にして200円以上、年収換算で40万円以上の格差がある状態を放置することは、政府が唱える同一労働同一賃金の原則にも、地方創生にも反します。全国最低800円の実現が急務です。

▼上げ幅に踊らされない

 中小企業対策では、(1)助成金について生産性向上に焦点を当てたものに作り直す(2)下請けなど中小企業の取引条件改善に向けて大企業にヒアリングする――とあります。最賃引き上げのための中小企業向け助成金の国の予算規模はわずか20億円程度。中小企業の経営に必要な公正取引の確保についても、厳格なルールの策定や監督体制の整備といった規制強化には触れていません。

 7月下旬に予定されている最賃の目安答申で予定通り3%引き上げられれば、新聞紙面では「過去最高の引き上げ」という見出しが踊るでしょう。その裏で、最賃はどのぐらいの金額が必要かという水準論議や、低位のC、Dランク県の大幅な引き上げ、中小企業の経営対策など、大切な課題が残されていることを見る必要があります。 (連合通信) 

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