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2016年09月20日

残業代ゼロ・首切り自由など悪法推進
「働き方改革実現会議」始動へ

ILO原則の放棄が狙い

 政府は9月中に「働き方改革実現会議」の初会合を開く予定です。非正規労働者の処遇改善や長時間労働の是正が検討課題とされていますが、狙いは、政権の支持基盤強化と、労働に関する政策は公労使三者で決めるべきとするILO(国際労働機関)原則の放棄――にあるとみられます。一方、残業代ゼロ法案、首切り自由化などの悪法は着々と進める構えです。

 実現会議は安倍首相が議長を務め、閣僚8人と学識者らのほか、経済団体からは3人、労働団体は神津里季生連合会長だけ。元アイドルの抜てきも報じられています。ここでまとめた結論を既成事実にするというおなじみの手法です。

 これまでは、厚労相が、公労使の三者同数でつくる労働政策審議会に法改正を諮り、意見反映させた法案を政府が国会に提出するという手順が踏まれてきました。労働関連の政策は、時の政府が勝手に決めるのではなく、労使の参画で決めるべきとのILO原則を踏まえてきたからです。

 しかし、それでは時間がかかり過ぎる、労使の反対で思い通りの改正ができない、といういら立ちが政府与党内で見え隠れします。その思いが露骨に現れたのが、7月に開かれた政策決定プロセス有識者会議でした。自民党提言(2月)を受けて開かれた会議で、座長が「ILOはどのぐらい偉いのか」とやゆするなど暴論が噴出しました。

 いら立ちの矛先は、ILOや戦後の労働政策の原則に立とうとする厚労省にも向けられています。「実現会議」は加藤勝信一億総活躍担当相の所管。本来厚労相が行う労働法見直しを、他の所管大臣に担わせるのは極めて異例です。

▲具体的な提案が重要

 巧妙なのは、実現会議での検討課題が、非正規労働者の処遇改善や長時間労働の是正など、労働側が要求してきた課題だということです。あえてこれらの政策を掲げて支持率を上げ、ILO原則を事実上放棄し、あわよくば労組の一部を取り込む――。彼らにとっては一石二鳥、三鳥なのかもしれません。

 アベノミクスの失敗は明らかです。安保法制反対の課題ではかつてない運動の広がりが見られます。改憲に野心を抱く現政権の「労働者寄り」政策への軌道修正は、焦りの表れと見るべきでしょう。

 では、これらの政策を政府与党は本気でやるつもりなのでしょうか。労働弁護団元幹事長の水口洋介弁護士は「『どうせうそに決まっている』と言っていては闘えない。『こういう制度が必要だ』という具体的な提案を示していくことが必要」と指摘します。

 政府がわざわざたたき台を示しているのですから、不合理な格差の解消や労働時間の上限規制、最賃千円以上など要求実現を進める絶好のチャンス。実効ある法整備を要求し、議論の主導権を奪い返したいところです。

▲看板に反する悪法の数々

 政策の矛盾もしっかり指摘する必要があります。実現会議の看板とは逆行する法改正が目白押しです。

 残業代ゼロ制度や、営業職への裁量労働制を導入する労働基準法改正法案は、予断を許さない状況にあります。不当解雇でも、もの言う従業員を追い出せる金銭解決制を、条件を限定して導入する方向。職業紹介事業の規制緩和など雇用仲介事業の見直しも今秋、労政審で急ピッチで進められそうです(表)。

 働く者の要求を取り込むふりを見せながら、労働者保護規制に大穴を開ける政府の姿勢を、広く知らせる必要があります。(連合通信) 

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