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2016年05月02日

「これ、SF映画よりヤバイよ」
緊急事態条項の伝え方

インタビュー/「あすわか」の内山宙弁護士

 安倍政権が改憲で創設を狙う「緊急事態条項」。その危険をユニークな切り口で解説し、注目を集めている弁護士がいる。「明日の自由を守る若手弁護士の会」の内山宙弁護士だ。とっつきづらい改憲問題。政治に関心のない人たちにどう伝えればいいのかを聞いた。

▲スターウォーズと比較

 人気SF映画「スターウォーズ」シリーズ。昨年7作目の最新作が公開され、これを見た弁護士仲間から「緊急事態条項にそっくりだ」と言われました。そこで全作品を見て「緊急事態条項がスターウォーズよりヤバい4つの理由」というブログ記事を書きました。

 まずは、歯止めがないということ。映画「スターウォーズ」では、権力者(議長)は議会で承認がなければ非常事態の権限を得られません。しかし自民党改憲草案によれば、内閣が必要とさえいえば緊急事態を宣言することが可能になります。

 二つ目は民主主義が終わってしまいかねないという点。物語の中でヒロインが「自由は死んだ。万雷の拍手の中で」と語る場面があります。民主主義国家であっても権力側が確信的にやろうと思ったとき、議会の承認さえあれば独裁を許してしまう。改憲草案では緊急事態条項の国会承認がいるのは宣言の「事後」でもいいことになっています。与党が多数の日本の議会ではそのまま承認されるのは目に見えています。

 三つ目は司法のチェックを受けないという点。物語では警察権と司法権を持つ騎士「ジェダイ」が独裁者に立ち向かいます。しかし草案には司法が事後的に条項の行使をチェックできる権限が書き込まれていません。こうした点から見ると、草案の緊急事態条項の方が「スターウォーズ」よりよほど危険と言えます。

▲国民主権に目覚める

 大切なのは四つ目です。物語では主人公がフォースという力を使って独裁者と戦いますが、私たち一人一人にも「国民主権」という力があります。この力に目覚めて野党共闘を後押しすれば、民主主義を守ることができるのです。

▲まるでホラー小説?

 続けて書いた「緊急事態条項が通ってしまった未来からの伝言」と言う記事では、もっとイメージしやすい表現を心がけました。

「2016年の国政選挙で野党が大敗し、緊急事態条項が創設されてしまった後の日本」という未来小説風の記事。この未来の日本で暮らす大学生が現在の私たちに向かって語りかけます。「これが最後の民主的な選挙になってしまうから、選挙に行ってくれと叫びたい」。

 読んだ人からは「怖すぎる」「ホラー小説」という反響もありました。でも、このまま改憲が進めば理論上はありえる話です。

▲無関心層に届く言葉を

 緊急事態条項の危険を伝えるための工夫は安保法についても当てはまります。ただ「違憲だ」というだけでは不十分。正しいことであっても一方的に自分の主張を話せば相手に引かれてしまいます。では、どうすればいいか。

 有効なのは「自分」「私たち」「今」と順序立てて自分のストーリーを話し、聞く人に共感を持ってもらう方法です。

「自分」がなぜ問題意識を持ったのかを出発点に語り、葛藤を乗り越え、こう思うようになったと。それは「私たち」にとっても重要な問題であり、これを何とかするために「今」行動しよう、と訴えるのです。

 政治の問題について語るときにはさまざまな語り口を持つべきです。映画などの娯楽と絡めるのはその一つの方法。政治に関心がない人でも、どれか一つ共感を覚えるテーマがあるかもしれない。

 かぎとなるのは2012年の選挙で投票に行かなかった41%の人たちです。無関心層といわれる人たちが目覚めれば、日本の未来は変わります。(連合通信) 

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