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2012年 6月 1日

旅行業者への規制が急務
高速ツアーバス事故の背景をみる 

転機は2000年の規制緩和 

 群馬県内の関越自動車道で、格安を売りにする高速ツアーバスが衝突事故を起こし、乗客7人の命が奪われました。客を集めバスを手配する旅行業者が、安全運行に責任を負わない仕組みの見直しが求められています。

▼安全犠牲の事業スタイル

 夜行バスに乗った時、控えの乗務員が床下から上ってくる姿を見かけたことはありませんか? 仮眠スペースが、床下の荷台付近にあるのです。

 「そんな地面すれすれで休めるの?」と考えてしまいますが、バス運転手が加入する労組の役員は「足を伸ばして横になれるだけまだまし。格安ツアーバスはそれさえない」と言い切ります。

 転機は2000年の規制緩和です。貸切バスへの新規参入が容易になったことと、「東京~大阪間3500円」など料金設定の自由化が過当競争を生み、安全運行に必要な経費や人件費が削減されてきました。仮眠もまともにとれない安全犠牲の運行が増えていったのです。

 バスを手配する旅行業者が、旅客輸送を丸投げできる仕組みも、安全犠牲に拍車をかけています。道路運送法違反の日雇い運転手や、何重もの下請け構造、ピンはねがまん延。突然の運行依頼がきても「断れば次の仕事がない。無理にでも受けざるをえない」といいます。

 事故を受け、政府は旅行業者に乗合バスの許可取得を急がせる方針を打ち出しました。無責任運行の改善は待ったなしです。

▼運行基準の改善を

 走行距離などに関する国の基準も問題です。ワンマンの運行上限である「670キロ」は2日間の平均。1日単位ではそれ以上の運行を命じることができるというザル規制です。

 この基準は07年に起きたあずみ野観光バス事故の後にできたもの。「それまではバス会社が独自に1日450キロなどの基準を設けていたが、国交省の基準ができたことで逆に運転時間を増やされた」と前出の組合役員は怒ります。

 長すぎる運転時間の上限を見直すほか、(1)夜間運行は距離に関係なく2人体制にすること(2)勤務間の休息時間を8時間から引き上げること(3)違法事業者への監視体制の強化――などが必要です。

▼業界の意向で規制緩和

 ツアーバスは、海外からの旅客が大きな収入源。国交省の「670キロ」上限は関西国際空港~東京ディズニーランド(中央道経由も含む)間の「ドル箱路線」が収まる距離。基準の見直しは業界の意向に気を配るのではなく、安全を最優先にすべきです。

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