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2012年 8月 2日

「職務」重視で賃金格差是正を
明治大学の遠藤公嗣教授 

労組に研究開発費助成を要望 

 非正規労働者権利実現全国会議(代表幹事・脇田滋龍谷大学教授)がこのほど都内で開いた会合で、欧米の労働事情に詳しい遠藤公嗣明治大学教授が講演し、非正規労働者の処遇を改善するには、「同一価値労働同一賃金」の実現が必要と力説した。雇用形態や性の違いに中立的な「職務」を基準とする雇用慣行への移行を提唱。そのために必要な研究開発の費用を、スト資金など潤沢な資金を持っている労組に助成してほしいと訴えた。

▼非正規は既に職務基準

 職務を基準とする雇用慣行は、世界では一般的だ。性や家族、居住地などの属人的な要素や、雇用形態の違いは考慮しない。職務遂行に必要な能力や責任、心身への負担、労働環境を評価し、賃金を決める。

 これに対し、日本では1960年代以降、男性が稼ぎ主となる家族を標準的な世帯とし、終身雇用や年功賃金を特徴とする雇用慣行が進められた。正社員である男性が家族を扶養し、妻や子どもがパートやアルバイトで家計を補助するというモデルを想定したもの。そのため、正規と非正規の間の著しい賃金格差は大きな問題になりにくかったという。

 90年代以降、企業は正社員を減らし、非正規を多用する経営方針に転換。最近の厚労省調査では、家計補助ではなく自分の収入で生活していると答えた非正規労働者が約半数に上った。遠藤教授は「60年代型の日本システムが崩れている」と述べ、従来の労働政策を変更する必要があると強調した。

▼正規・非正規の壁なくす

 遠藤教授が提唱する新しい社会システムは、共働き型の家族モデルと、職務を基準とする雇用慣行をセットにした仕組みだ。「世界でも特殊な日本の雇用慣行を一般的なものにするだけ」と語る。

 職務基準の雇用慣行では、会社に雇われてさまざまな職務をこなすのではなく、特定の職務の遂行のために雇われる。
 企業内で希望する職務がなくなれば解雇されるため、正社員の雇用保障は今よりも弱くなるが、同教授は(1)正規・非正規の区分を撤廃できる(2)職務が同じであれば、短時間雇用で働く人にも時間当たりで平等な賃金を保障できる――ことを利点として挙げる。

 職務を基準とする雇用慣行は「同一価値労働同一賃金」実現への近道。非正規労働者の処遇改善が期待されるものの、職務遂行に必要な技能や責任、負担を分析し、公正に評価する手法の確立が欠かせない。日本にはそのノウハウがないため、遠藤教授は研究開発への助成を、余剰資金が豊富な労働組合に呼びかけたいと語った。

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