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2012年 1月26日

原発事故の休暇取得で解雇
大手損保のチューリッヒ

日本支店の元社員が提訴 

 大手損害保険会社「チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド」の元男性社員(40)が「福島原発事故での休暇取得を口実に不当解雇された」として、同社と当時の上司や人事担当者の計4人に地位確認と慰謝料など約3800万円を求める裁判を東京地裁に起こしたことが1月25日までに分かった。

 訴状によると、男性は昨年3月11日に起きた東日本大震災と福島原発事故で被災した両親や親族の安否確認や支援のため、会社の許可を得て12日間休暇を取得。福島県などの被災地に入った。

 ところが、人事部は6月末に「親族は被災していない。自分から辞めなければ懲戒解雇になる」などと男性を脅し、7月4日に解雇した。

▼パワハラもみ消し背景

 男性は2009年秋から、直属の上司から暴言やしっ責などのパワハラを日常的に受けていた。翌年4月には社内制度に基づいて内部通報したが、人事部は事実を認めずに男性を課長補佐から平社員に降格。さらに会社側は「上司の言動による重度のストレス障害」とする診断書の受け取りを拒んで傷病休暇も与えず、年休取得を強要したという。

 男性は「会社はパワハラもみ消しに抵抗したことを疎ましく思ってクビにした」と主張。同社広報部は、連合通信の取材に「提訴内容を確認中。現時点ではコメントできない」としている。第1回口頭弁論は2月14日に開かれる。

「福島出身として許せない」あまりにずさんな手法に憤り

 損害保険会社「チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド」は、世界に知られるチューリッヒグループの一員だ。提訴した元男性社員(40)は「会社は社会的責任を逸脱した」と語る。 

 同社が、福島県いわき市に実家がある男性へ示した解雇理由通知書には「親族が被災したと虚偽報告して休暇を不正取得した」とある。だが、震災や原発事故が起きたころ、市内や周辺は避難する市民が相次ぎ、物資も届かなくなる事態に陥っていた。男性は憤る。

 「被災した市民は地獄のような苦しみを味わった。その渦中にいた家族を助けようとした私の行動を否定するのは、会社が市民たちを被災者ではないとみなしたのも同然だ」

▼労働法を全く無視

 男性は弁解の機会さえ与えられておらず、労働契約法16条が禁じた「解雇権乱用」の可能性が高い。解雇された当時、男性はパワハラによるストレス障害で休業しており、労災に相当する状態だった。労働基準法19条の「疾病療養の休業期間は解雇してはならない」との定めに違反していることになりそうだ。

 解雇理由通知書に記された社名は正しく記されていなかった。パワハラもみ消しに始まる一連のずさんな手法を司法がどう判断するのかが注目される。

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