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2012年 7月30日

規制緩和政策の大転換を 
高速ツアーバス規制

夏の緊急対策は不十分   

 群馬県内の関越道で7人が亡くなった高速ツアーバス事故を受け、国土交通省はこのほど、利用客の多い夏の緊急対策をスタートさせました。規制緩和政策の修正を図るものですが、関係する労組は抜本的な転換が必要と訴えています。

▼利用者の自己責任に?

 緊急対策の柱の一つが、バス会社への緊急重点監査とインターネットによる結果の公表です。国交省はホームページで「行政処分済み」「悪質な法令違反はみられなかった」などの監査結果や、安全確保の履行状況を掲示しています。

 問題のある会社を市場から淘汰(とうた)しようという試み。しかし、規制緩和の弊害を指摘してきた川村雅則・北海学園大学教授は、「これでは何かあった時、安全性が疑わしい会社を選んだ利用者の責任が問われないか。本来、安全性が確認できない事業者を参入させてはならないはず」と違和感を示します。

 貸切バスは全国に約4500社。2000年の参入・増車規制撤廃を機に倍増しました。過当競争は過度の人件費削減を促し、道路運送法違反の「日雇い運転手」をまん延させました。国交省の監査では6社に1社で「重大な法令違反」が見つかっています。

 これをチェックする同省の職員はわずか300人程度です。トラックやタクシーも含む10万超の事業所も対象ですから最初から無理があります。国が行うべき安全確保を市場原理に任せていては、安全・安心は得られません。

▼ぜい弱な労働規制

 交替運転者の配置基準も変更しました。2日間平均で1日670キロまで認められていたワンマン運行を、原則400キロ以内に。しかし、これも緊急対策で、心身の負担の大きい夜間運行での交替運転者の配置や、休息時間規制の拡充には触れていません。

 職業運転者は過労死の最も多い職種の一つ。厚労省の「改善基準告示」では、バス運転者の休息時間は最低8時間とされていますが、通勤や生活時間を含めれば睡眠も満足に取れないと、貸切バスの労組は拡充を訴えています。
 国交省は年度内のとりまとめに向け、過労運転防止策を検討中です。

▼「人柱行政」でいいか 

 過当競争で運賃が低下するなか、「旅行業者からの受注を断ると次の仕事がない。無理をしてでも応じる」と多くの貸切バス関係者が指摘します。

 国交省は現行の高速乗合バス規制を改め、ツアーバスを企画する旅行業者に道路運送法を適用する方向で、通達の改定作業を進めています。監査体制の拡充など、旅行業者への監督指導の強化が急がれます。

 また、運賃、増車、参入の規制を緩和したことの再検討も必要です。緩和後の10年間で一日あたりの営業収入は2割減少、バス運転者の年間賃金は534万円から384万円に低下しました。過当競争と安全犠牲は表裏の関係にあります。

 犠牲者が出ないと動かない交通行政を、川村教授は「人柱行政」と批判します。経済性を優先し、安全を犠牲にする愚を再び繰り返してはなりません。

〈用語解説〉高速ツアーバス

 2地点間の輸送を高速道路経由で行う旅客事業。旅行業者がインターネットなどで乗客を集め、貸切バス会社に運送を委託します。規制緩和を機に、既存の乗合バスをしのぐ勢いで急増しました。                                                        

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