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2012年 7月 10日

国会事故調報告書をどう生かす 
東京電力福島第一原子力発電所事故

これから問われる日本人の責任   

 東京電力福島第一原子力発電所事故について調べてきた国会事故調査委員会が7月5日、調査報告書を公表しました。

 報告書は、事故原因を「『自然災害』でなく明らかに『人災』である」と断定しました。1号機の非常用ディーゼル発電機が津波到達前に止まっていた可能性などを挙げて、「安全上重要な機器の地震による損傷がないとは言えない」という見方も示しました。政府と東電が主張する「予想外の大津波」説に大きな疑問を投げかけているのです。

▼原因や背景見えてきた

 計641ページに上る報告書には、半年間で約1200人にわたった関係者の聴取から見えてきた、事故の背景や被害拡大の要因が書き込まれています。今も事故に苦しめられている被災者が読めば、はらわたが煮えくり返るようなものばかりでしょう。

 東電は、過酷事故に備えるために1号機の配管や4号機の圧力抑制室の補強工事が必要だとの認識を持ちながら、大量の放射能漏れを起こすまで放置していたそうです。電力会社は、原発を動かせなくなるのを恐れ、安全規制強化に反対し続けていたといいます。

 規制当局である原子力安全・保安院は、知識や情報量で電力会社に先を越され、立場が逆転してしまっていたとのこと。事故が起きた後、首相官邸と東電が連携のまずさから混乱に陥ったために放射能の飛散予測などの情報が伝わらず、住民はいたずらに被曝させられたとしています。

▼政治家は政策化が責務に

 大事なのは、報告書をどう生かしていくのかです。

 事故調は、報告書とともに「(8~9月発足予定の)原子力規制委員会を監視する国会委員会の設置」や「世界基準に照らした原子力法規制の抜本見直し」のほか、「国の負担による被災者の被曝検査と健康診断の実施」など7項目を提言。国会議員に実現するよう強く迫っています。

 政府や東電などの電力会社が事故責任をまっとうするために、原子力のあり方をゼロベースで見直すことは当然ですが、国会議員にとっても自分たちで設けた委員会の提言実現は新たな任務となりました。混迷する政局に関係なく、報告書の中身を政策に反映させていかなければ、憲法の定める「国権の最高機関」としての意義は地に落ちることでしょう。

▼根本問題の追及続けよう

 さらに重要なのは、今回の報告書にも欠点があるという面です。委員の一人である崎山比早子氏(元放射線医学総合研究所主任研究官)は、こんなメッセージを出しています。

 「地震大国に54基もの原発をつくってしまったという事故の間接的原因の究明がほとんど行われず、使用済み核燃料の問題も手付かずであることが残念」

 つまり、「原子力ムラ」に象徴される国の原子力政策の根本的問題について、報告書は踏み込むことができなかったというわけです。黒川清委員長(元日本学術会議会長)も「事故は終わっていない」と語り、民間中心の委員会による国会調査を今後も続けるべきとしています。

 報告書が公表されてから数日間、閲覧やダウンロードができる事故調のウェブサイトは大変混雑しました。英語版が入手できることもあり、海外からも多くのアクセスがあったとみられます。そのかたわらで政府は、報告書の欠点を突くように、崎山氏ら委員のメッセージを省みることなく原発を再稼働させました。原発事故があらわにした深刻な問題にフタをすることは許されません。こうした声を上げて、政府の姿勢をただすのは、事故を起こした当事者である日本人の責務となってきました。                                                           

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