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2013年 8月 8日

全国平均14円の引き上げへ
2013年度最低賃金改定

地域間格差など課題は山積

 2013年度の最低賃金改定について、厚生労働省の中央最低賃金審議会は8月6日、平均14円引き上げる目安を示した。東日本大震災をはさみ3年ぶりとなる2桁目安。同省の計算方法によると、生活保護との逆転現象は北海道だけとなる見通しだ。ただ、地域間格差や、「全国最低800円」「全国平均1000円」の中期目標の扱いなど課題は山積している。
 5日午後5時に都内の会場で始まった目安審議は、労使の意見の隔たりが大きく、翌午前10時半にようやく決着を見た。
 中賃審議会が示した「引き上げ目安」は、都市部のAランクが19円、以下、Bランク12円、Cランク10円、Dランク10円。加重平均で14円の引き上げとなる。今後本格化する地方の改定審議ではランクごとの目安をもとに引き上げ幅が決められる。

 目安通りに引き上げられれば、生活保護との逆転現象が生じていた10都府県全てで、かい離幅が「解消」することに。北海道は解消を来年度改定まで延ばすことが許された。

 安倍政権が最賃の引き上げに言及する中、田村憲久厚労相は7月、今後10年間で名目3%、実質2%の経済成長をめざす、骨太方針、日本再興戦略に「配意」した審議を要請していた。
 以下、課題ごとに検討する。

【地域間格差】200円台に拡大

 地域間格差はまた広がった。今後目安通りに引き上げられれば、最高額と最低額の差は9円増え、207円に。05年度の106円から倍増する勢いだ。
 月所定時間を155時間とすると、年収差は38万5000円にも及ぶ。放置すれば、人口流出や、内需の縮小に歯止めをかけようとする地方の努力に水を差しかねない。
 労働側は今年も「C、Dランクの底上げ」を重視してきた。改定審議のたたき台と扱われた「第4表(今年の賃金上昇率)」から導き出される各ランクの引き上げ額はA、B、C、Dそれぞれで9、4、4、5円。最終結果の19、12、10、10円をみれば、C、Dランクに特別に積み増しされた形跡は見られない。
 これが、地域間格差を前提とする現行目安制度の「制度的欠陥」によるものだとすれば、何らかの見直しが必要だろう。

【水準目標】無視された政労使合意 

 「できる限り早期に全国最低800円」「全国平均1000円をめざす」とした、民主党政権時の政労使合意「雇用戦略対話合意」は、無視された格好となった。厚労省によると、破棄されてはいないが、「配意」の対象ではなく、考慮要素にはならなかったとしている。審議では、労働側の求めによって「合意」文書が配られただけで議論に至らなかった。政権交代の影響が如実に表れた。

 これに代わったのが、安倍政権の骨太方針と日本再興戦略。今後10年間の平均で名目3%、実質2%の経済成長をめざすとし、最賃については「引き上げに努める」と書かれているだけの方針文書である。雇用戦略対話合意のような水準目標はどこにもない。

 審議で使用者側は、政府が「配意」を要請したことを「時々の事情」だと捉えて、「一定程度の配慮にとどめるべき」と述べるなど、要請が参院選対策だったと見透かすような主張を展開していた。

 来年以降の展開を考えると、「人間らしく暮らせる最賃の実現」という水準を見据えた取り組みが一層、重要さを増している。

【生活保護との逆転現象】比較方法、検討の時期に

 徹夜明け6日の会見で、厚労省は「北海道以外の全ての都府県で生活保護とのかい離が解消するのは初めて」と胸を張った。

 一方、同省が「整合性」を検討する際、生活保護を低く、また、最賃を高く見せるよう計算しているとの指摘は根強い。連合も、生活保護費を算定する際、大部分を占める「生活扶助」は、低額な農村部を含む県内全域の平均ではなく、最も高い県庁所在地の額によるよう主張してきた。この課題はまだ途上にある。

 さらに、全労連や傘下の地方組織は、生活保護の住宅扶助の算定方法や、最賃を月額換算する際の労働時間の設定方法などについても「ごまかしがある」と指摘。きちんと見積もれば、最賃は1000円を数百円上回る計算だ。

 「生活保護との整合性」が義務付けられて5年。同省が、無理な働き方を前提にせず、生活の実情に合った形で、生活保護を上回る水準を示し得ているのか、改めて検討すべき時期に来ているのではないか。

 特に、生活保護は給付水準の大規模な引き下げが進行中だ。審議への影響が出るのは次々年度。最賃との比較で低く見積もられた生活保護が、さらに低くなる事態は避けたい。

〈目安審議ドキュメント〉徹夜の攻防、労使ともに「不満」

 5日午後6時過ぎ 5時開始の全体会議終了後、公益委員が労働側、使用者側と個別に話し合い落としどころを探る。この時間帯は、厚労省の事務方が、報道陣が待機する喫煙室で談笑する余裕も。「昨年より早くまとまりそうですか」との問いに、首を振りながら「それは難しいね」。

 午後11時頃 地方組織の代表者を集めた会議の終了後、労働側控え室に電話が鳴り響く。労働側委員たちと、大きな資料を手にした事務局員たちが足早に出て行く。

 6日午前0時過ぎ 再び控室に多くの足音が響き、緊張感が走る。委員たちが厳しい表情で戻ってきた。すぐに会議に入るとのことで、再び報道陣が待機するフロアに戻る。

 午前2時過ぎ 公益委員が控える部屋を退出してきた、労働側キャップの須田孝・連合総合労働局長を記者たちが囲む。「労使の隔たりがあまりにも大きいので、それぞれ個別に話していてもらちが明かない。この期に及んでは公益が裁定し(見解を示すこと)、それでもだめならば7日の答申は延期だと申し入れたところだ」

 午前4時頃 動きが見えなくなり、交代要員がいない社の記者たちが廊下でウトウトし始める。

 午前8時頃 厚労省の事務方が慌ただしく動く。

 午前9時半過ぎ 労使が同席する全体会議開始。

 午前10時半 目安審議が決着。テレビや大手紙の記者たちは例年通り、すぐに労使の責任者へのぶらさがり会見を始める手はずだったが、使用者側は記者たちを無言で振り切り、エレベータに乗り込む。

 午前11時過ぎ 労働側が会見。C―Dランクの大幅引き上げがならず、地域間格差が広がったことなどについて「不満が残る」と語った。

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