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2013年 4月 4日

上司の7割超「意欲向上しない」
〈大阪の新人事考課制度を問う〉下

当局側も問題認識/住民サービスにも悪影響 

 74・7%――。大阪府が昨年度試行した人事考課制度の相対評価について、評価に携わった上司たちが「職員(部下)の資質や能力、意欲の向上を図れるとは思わない」とアンケートで答えた割合だ。

 同じく「思わない」とした部下(70・4%)を上回り、逆に支持した上司は478人中わずか7人。「意欲向上」という目的に反する結果となったが、大阪府と市は4月からこの制度を本格導入した。

▼「職場が回らなくなる」

 なぜ、ここまで評判が悪いのか。評価の物差しが曖昧なことも大きな一因だが、大阪府職労の小松康則書記長は「そもそも専門分野の違う人が同じ職場で働いているため、比べること自体が難しい」と指摘する。

 例えば、保健所では事務職や保健師のほか、薬剤師、ケースワーカー、検査技師らが働いている。ある保健師は「感染症や難病、母子保健など業務ごとにチームは分かれていますが、実際はチームの枠を超えないと仕事は回りません。ランク付けされてしまうと、自分のチームの仕事を優先しがちになり、職場は回らなくなります」と懸念する。

 障害者の福祉施設で働くケースワーカーも「全員が協力し合って頑張っても、(制度上)必ず誰かが下位評価になる。賃金に差をつけられるのは悲しいし、悔しい」と憤る。

 評価する上司側もアンケートでこう訴えている。

 「業務を期待どおりこなしても下位評価にされた場合、非常にモチベーションが下がりフォローに苦慮している。むしろ損失の方が大きい」

▼住民目線で仕事できず

 相対評価制度は、住民にも悪影響を及ぼそうとしている。府税事務所は、滞納者の生活状況を把握し、分割して納付してもらうなどの配慮が必要な仕事だが、その一人は次のような事態が起きるとみている。

 「滞納者が増える中、新制度導入前から『事務処理を早くして滞納者をできるだけ減らせ』と毎日言われています。生活状況の把握には時間がかかるので、(制度の本格導入によって)成績を上げるためにろくな調べもせず差し押さえることになりかねません」

 前出の保健師も「住民よりも上司の命令や指示が最優先される」と危惧する。評価が下がれば給与や昇進に影響し、最悪の場合、免職の恐れもあるためだ。制度の施行条例の附則には「府民のために全力を尽くすことができる組織の実現をめざす」とあるが、これでは本末転倒だろう。

▼「制度は即刻廃止を」

 こうした懸念に対し、府側も問題を認めている。4月からは、評価の対象グループを部局から職場単位に改め、「身近な上司による評価で納得性を高める」とした。市も若干の修正をした上で制度を始めたが、問題の本質は何も変わらない。

 大阪自治労連の荒田功書記長は、新人事評価制度の即刻廃止を求めている。

 「行政に求められるのは、住民からの話をきちんと受け止め、課題を解決する力であり、点数化はできない。相対評価のメリットは何もない」

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