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2013年 2月 5日

電機産業の再生に妨げ
大規模リストラに労働総研が提言  

「従来にない特異性」指摘 

 全労連と連携する政策研究機関「労働総研」はこのほど、電機産業再生への提言をまとめた。14万人とも言われる大規模リストラについて、違法な退職強要や便乗型の人員削減など「従来にない特異な性格」を帯びていると指摘。こうした手法は避けられないものではなく、逆に産業の再生を妨げると警告している。

▼下請、地域経済に影響

 提言は一連のリストラの「特異さ」として、(1)国の歳出による「エコポイント政策」終了(2011年3月末)後のリストラであること(2)好調な重電メーカーまでもが便乗してリストラを行っていること(3)半導体関連DRAMメーカー「エルピーダメモリ」を米企業に売却するなど国内生産拠点維持を軽視(4)赤字額の水増し(5)人権侵害を伴う退職強要の横行――などを指摘する。

 従来はリストラ直後に株価が上昇していたのに、今回は逆に株価は暴落、経営基盤を揺るがしていると警鐘を鳴らす。

▼失業者155万人も?

 国民生活、地域経済に与える影響も深刻だ。仮に今後もリストラが進み、対象者が30万人に上れば、失業率は再び悪化して5%台に。下請け企業への影響は厳密な推定は困難としつつ、パナソニックとシャープの両グループの下請けのうち、14・1%に及ぶ2期連続赤字の企業が倒産すると仮定すれば、155万人が職を失うと指摘した。

 さらに「日本の電機産業と製造業の衰退も決定的なものとなる恐れがある」とも強調。「産業のコメ」とされる半導体の国内生産が縮小し、産業の存立さえ危ぶまれるという。

▼内部留保は18兆円

 「リストラは不可避ではない」。提言作成に携わった顧問の大木一訓・日本福祉大学名誉教授は、「リストラやむなし」との昨今のマスコミ報道の論調や、労使一体で「構造改革」を進める企業内労組の対応に苦言を呈す。

 労働総研の調べによると、「電気機械・情報通信機械産業」の昨年7~9月期の内部留保は17・9兆円。大手メーカーのほとんどが整理解雇を回避するだけの体力を持っていると指摘するとともに、「赤字となったらリストラで黒字化するという経営政策が許されるのか」との根本的な問題も提起する。

▼米国式経営の導入が分岐 

 では、なぜ電機産業はここまで衰退したのか。

 この問いに対し、提言は「既に90年代に始まり、この10数年間で急速に進んだ構造的変化の結果」としたうえで、人員削減で短期利益を求める「株主重視」の米国式経営の導入と、生産機能の海外移転、別会社化を挙げた。雇用や地域経済への配慮を含む「企業の社会的責任(CSR)」が軽視され、特異なリストラが行われている背景を指摘する。

 電機産業では90年代以降、「選択と集中」の掛け声の下、人員削減、子会社化、非正規化などのリストラが進展。国外企業への生産委託や、「ファブレス企業(生産をしないメーカー)」化を強め、国内産業は空洞化が進んだ。

 その結果、品質管理は低下、国内での技術開発やノウハウの蓄積が難しくなるなど、電機産業の「衰退」を招いた構造的欠陥を解き明かし、一層のリストラは電機産業をさらに衰退させると警告している。 

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