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2013年 9月 6日

    「内戦ではない虐殺だ」
現地報告 シリアは今(中)

空爆で市民や子どもが犠牲に

 今年2月の爆弾事件で閉鎖されていたトルコ南部ハタイの国境が再び開かれた。しかし、外国人は通過できないので、違う国境からシリアへの潜入を試みた。

 国境から歩いて1時間程の場所にあるシリア領内の病院を取材した。病院は元学校を改造して急きょ造られたものだ。(写真は、ヘリからの空爆で負傷した12歳の少年)

 病院に到着して夕食を取っていると、緊急連絡が入った。「近くでヘリコプターの空爆があり、重傷者が運ばれてくる。手術をするから撮影しなさい」とドクターに告げられた。政府軍が民間人を空爆して5人が即死、助かった12歳、13歳の少年2人と大人1人が運び込まれた。少年たちは親に頼まれ、パンとコーヒーを買いに行っていた所で攻撃を受けた。

 手術が始まる前、ドクター自身が血を抜かれていた。訳を聞くと、「運ばれてきた少年に輸血が必要だから同じ血液型のドクターが血を分けているんだ」。これから手術に当たるドクター自らが輸血しなければならない。

 しかも、電気が足りず、携帯のライトを使って手術が行われた。5時間近くかけて3人の手術を終えたドクターに「大丈夫ですか、お疲れさまです」と声を掛けると、「今日なんかまだ良い方だよ。1日で50人近く手術した事もある」と言われた。日本では報道されない内戦の激しさを、たった1日で垣間見た気分がした。

▼殺され続ける民間人

 反政府側の自由シリア軍には周辺諸国はもとより、遠くロシアのチェチェンからも義勇兵が入ってきている。

 アサド政権としては自由シリア軍を攻撃してもキリがないと判断し、自由シリア軍の制圧圏内にある民間人を攻撃し始めたようだ。民間人たちが「自由シリア軍がいるから空爆される」と思い始めれば、自由シリア軍そのものを攻撃するより効果があるからだ。病院を取材中に「内戦」という言葉を使った私に対し、ドクターは言葉を荒らげた。

 「ジャーナリストなら内戦と言わないでくれ! 何の抵抗もできない一般市民を攻撃しているこの状態は虐殺だよ」

 今年3月、反政府軍の攻撃は首都ダマスカスにまで及ぶようになった。アサド政権はついに北部のアレッポを制圧しようと、短距離弾道弾スカッドミサイルで攻撃。ミサイルは貧民街に着弾し、50人以上の一般市民が犠牲となった。

 この頃、アサド大統領は亡命しか残された道はないとみられていた。ところが、政権を支持するイランが4000人規模の軍を派遣。不介入政策を取っていたレバノンが政権支持に転じたため、内戦のパワーバランスは一気にアサド政権側へ有利に流れた。

▼国際社会は対処療法だけ

 平和構築を模索する国連だが、安全保障理事会は反体制側を支持する米、英、仏とアサド政権を支持する露、中に分かれ、機能不全に陥っている。

 米英仏やEU諸国は化学兵器使用が明らかになれば軍事介入する姿勢を示してきたが、何度も化学兵器が使われた後も介入できず、国際社会から内戦を止める力を発揮できない状態が続いている。

 潘基文(パン・ギムン)事務総長は人道支援会合を開き、15億ドルの支援を各国から取り付けた。日本もシリア支援のため8050万ドルを用意している。しかし、いずれも対処療法でしかない。

▼「日本が動いてくれ」

 平和憲法を持ち、不戦を誓った日本という国はシリアだけでなく、中東地域の多くの国から評価されている。シリアのドクターはこう言った。

 「なぜ日本は内戦を止めるために動いてくれないんだ? 日本は原爆を落とされて二度と戦争をしない、させない国になったんだろう」「アメリカやヨーロッパじゃなくて、中立な立場の日本が動いてくれなきゃダメなんだよ」

 われわれ日本人が思う以上に、日本という国は期待されている。日本だからこそできる平和への道、難民支援の方法があるはずだ。だが、残念な事に日本ではシリアの報道が少ない。

 まずは知る事から始めてほしい。 (記事と写真 フォトジャーナリスト 久保田弘信)=つづく=(連合通信)

      

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