京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化
府職労ニュース



住民と自治体労働者が互いに「自治力」高めよう
問題提起 岡田 知弘氏自治体問題研究所理事長京都大学教授) 

今、なぜ「格差と貧困」が拡大しているのか

 「格差と貧困」は、資本主義が固有に生み出す社会問題だ。戦後憲法理念と高度経済成長の果実により、まがりなりにも整備されてきた「福祉国家」的政策体系によって、1980年代後半まで矛盾の緩和が図られてきたが、経済のグローバル化により、市場経済面での格差の拡大が開始。国もグローバル化による社会的「痛み」の受忍を迫ることとなった。
 小泉「構造改革」と「戦後レジュームからの脱却」を公然と掲げる安倍内閣が登場し、国民の基本的人権を保障すべき地方自治体から、住民の命や最低限の生活条件を奪う地方行政体への変貌とも絡みながら「ナショナル・ミニマム」の解体と結びつく事態となっている。
 「強い国」と経済成長を第一義にした戦後地方自治制度の解体は、憲法改定問題に収斂するとともに、内外巨大資本にとって有利な所得再分配=行財政改革によって、住民の基本的人権や暮らしを直撃せざるをえない。とくにこの間の財政、経済改革の被害者となっている不安定就業者、青年層、高齢者、小規模自治体とその住民に矛盾が集中している。

格差の拡大のなかで疲弊する京都

 グローバル競争の中で地域間格差が広がっている。東京対地方はもちろん、京都府のなかでの地域間格差も大きく、特に北部の落ち込みは激しい。多国籍企業による本社集積地への富の集中と海外投資の見返りとしての輸入促進政策の帰結であり、繊維、農林業など地域産業の急激な衰退が原因だ。
 住民の中での所得格差も拡大している。就業機会の絶対的減少と失業率の高まりは、青年層で最も高い完全失業率となって表れている。就業者のなかでの低賃金・不安定雇用の増大はワーキングプア問題に直結している。正規社員・職員の給与・労働条件も悪化し消費購買力の低下と小売業全体の不振を招いている。
 問題は、相対的格差の拡大だけでなく、憲法25条に反する絶対的な貧困化が進行していることであり、ワーキングプア、生活保護世帯、就学援助世帯の増大はもちろん、最終的には自殺という形で命を奪うところまでに進行している。ナショナル・ミニマムの切り下げと解体に加え、税や各種公共料金、保険料の負担増が拍車をかけている。

自治体の役割が改めて問われている

 7月参議院選挙の意味するものは、一部の多国籍企業、大都市都心部のみが潤う「グローバル国家」型「構造改革」政治への国民多数の拒否表明だ。一方で、京都府、京都市の政策は国の進める「構造改革」に追従し、大規模プロジェクト・企業誘致、公務の民間化を推進する経営主義的なものだ。格差と貧困が広がる現代だからこそ、何よりも住民の基本的人権と自治権を尊重した地方自治体が希求されている。では、何を、どのようになすべきか。今日のシンポジウムで議論をしてみたい。
        

府職労ニュースインデックスへ