02年減額調整の脱法性、再び否認

国公権利裁判東京高裁判決

不利益不そ及原則適用は認める

 2002年の賃下げ(期末手当で減額調整)を脱法行為だとして、国公労連の組合員100人が訴えていた「国公権利裁判」で、東京高等裁判所は9月29日、控訴棄却の判決を言い渡しました。組合員の主張は再度退けられた形。一方、判決は一般論として、国家公務員にも不利益不そ及原則(不利益な変更・改定は過去にさかのぼって実施されない)は適用されるとし、一審判決よりは前進した見方を示しました。
 2002年には人事院が2%の賃金引き下げを勧告し、政府は同年4月にさかのぼって賃下げしたのと同額を、勧告通り年末1時金から減額しました。国公労連は十分な労使協議も行わずに賃下げするのは、憲法二八条(労働基本権)などに反すると主張、不利益不そ及原則に照らせば脱法行為だとし、国家賠償法に基づき03年5月に提訴していました。
 昨年10月、東京地裁が原告側主張をすべて退ける不当判決を出したため、東京高裁に控訴していました。 高裁判決は、不利益不そ及原則について「既に発生確定した部分について、後の立法によってこれを処分し、又は変更することは、国家公務員が労働の対価としての賃金に相当する給与によって生活の糧を得ていることに照らしても、またその財産権に対する侵害とみる余地もあることから、無前提に許されるものではない」としました。給与法などの立法が、こうした趣旨を免れることを目的として合理的な理由もなく定められた場合には、脱法・違法とされ得るとしました。 不利益不そ及原則は国家公務員にも適用されるとの指摘で、「国家公務員には直ちにあてはまるとはいえない」と、同原則の適用に否定的だった一審判決とは異なっています。
 しかし、今回の減額調整措置は、4月賃金にさかのぼらず勧告後の期末手当を対象にして年間給与を調整する手法であり、「相当」「許容された裁量の範囲内にあり合理的」と断定しました。期末手当減額は「手痛いことである」としつつも、「受容するのもやむを得ない」とし、「法の趣旨を脱法するものということはできない」と結論づけています。 憲法二八条との関係では全逓名古屋中郵事件最高裁判決をふまえ、「国は……勤務条件について団体交渉権を行う義務を負っていると解することは困難」と述べ、団体交渉権の侵害には当たらないとしました。

      不当判決に抗議する/国公労連が談話
 国公労連は「国公権利裁判」の控訴審判決について9月29日、「不当判決に強く抗議する」との小田川義和書記長名の談話を発表しました。
 談話は、判決が国家公務員への不利益不そ及原則適用を認めたことに触れつつも、減額調整には脱法・違法がないとしたことを厳しく批判しています。
 そのうえで、労働基本権の回復実現と不利益不そ及法理の後退阻止にむけ、奮闘すると表明しました。
「連合通信」
目次へ