これが改悪「労働契約法」だ

その@ 解雇、賃下げ、過労死、なんでもあり!?

 政府が準備している労働契約法は、職業人生に多くの落とし穴をつくります。そこに落ちれば解雇、賃下げ、過労死が待っているのです。仁義なき人生すごろく。無事生き残るのは容易なことではありません。
 まず職業人生のスタートで待ち構えるのが「お試し有期雇用」。有期で使ってみて気に入らなければポイッと捨てる──働く者をゴミ扱いする制度です。
 金銭解決制度は、裁判で「解雇無効」を勝ち取った労働者を「金でサヨナラ」とするもの。「賃下げを飲まないなら解雇だ」と脅せる雇用継続型契約変更制度(別名は変更解約告知)、経営者寄りになりやすい労使委員会に「賃下げOK」の権限を与える仕組みも検討されています。
 解雇や賃下げを避けようと無理な働き方をすれば過労死するかも。もちろんホワイトカラー・エグゼンプションで残業代はゼロ。

そのA 試行雇用契約/労働者をサンプル品扱い

 「試行雇用契約」というのは、平たくいえば「お試し有期雇用」制度です。
 有期雇用で使ってみて、よければ採用、気に入らなければ解雇(契約期間一杯で雇い止め)。最初から正社員を雇うのは不安、という経営者の意向を受けて考えられた制度です。
 化粧品などのサンプル品と同じこと。いくつかのサンプル品を集めて試用してみます。その中から「一番私の肌に合う」ものを選び、以後その化粧品を使い続けるというわけです。
 しかし、ほかのサンプル品は使い捨てられる運命にあります。「イマイチね」と判断されれば、ゴミ箱に直行となります。
 フリーター対策の責任官庁である厚生労働省が、若者をゴミ扱いする制度をつくろうというのです。若者の雇用問題は一層深刻化するのではないでしょうか。

そのB 解雇の金銭解決制度/金さえ払えば解雇自由

 解雇に納得できないと裁判に訴えた労働者が「解雇無効」の判決を勝ち取ったとします。会社の方に非のあることははっきりしたけれど、あんな職場には戻りたくない──という場合に労働者側から「お金で解決してもいいよ」と言うのなら分かります。
 でも、今度の制度は違います。解雇が無効とされた場合でも、経営者に「金で職場復帰拒否」の権利を認めようというのです。
 今なら、解雇無効の労働者を戻さなければ、会社は定年までの賃金を払い続ける必要があります。そうではなく、若干の金銭負担で気に入らない労働者をどんどん職場排除できるところが、今度の制度のミソだといえるでしょう。     「日本では金さえ払えば解雇は自由」──そんな風潮が広がってしまうのではないかと心配されます。

そのC 雇用契約変更制度/クビか賃下げかの2者択一

 「雇用継続型契約変更制度」。なんとも難しい用語ですが、学者による机上の空論の典型例です。
 経営者が「賃下げを飲まないと解雇するぞ」と脅します。労働者は解雇を避けるため、いったん賃下げを認めます。そういう労働者に対し「賃下げは無効だという裁判」を、その会社で働きながら進めることができる制度だといいます。
 しかし、いったん賃下げを認めながら、裁判を起こすような労働者を会社が雇い続けるでしょうか。
 これは、ドイツの変更解約告知制度をまねたもの。そのドイツでさえ、こんな面倒な制度はほとんど使われていないといいます。裁判を起こす労働者を会社が解雇してしまうためです。 結局、日本では「解雇か賃下げか」と脅すことを法律で認めることになるだけの話です。

そのD 労使委員会/賃下げ“お墨付き”機関

 労使の代表を選んで労使委員会をつくり、賃下げなどの労働条件変更について合理性のあるなしを判断させようとしています。
 経営者が労働者の声を聞かず一方的に賃下げをするよりはまし、という意見もあるでしょう。
 しかし、一方的な賃下げは裁判になれば「無効」とされます。ところが、労使委員会の合意があれば、賃下げが有効になってしまうかもしれません。
 問題は、労使委員会に正しく労働者代表が選出されるかどうかです。その保障がなければ、単なる会社の代弁委員会になります。
 会社は必要と判断すれば違法を承知で労働組合にも介入します。労組でもない労使委員会メンバーを、会社のイエスマンで固めることなど簡単でしょう。
 賃下げに文句のいいにくい職場がつくられます。
〈連合通信〉
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