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府職労ニュース


2008年 11月25日

天ヶ瀬ダムの再開発中止・見直しを

宇治・防災を考える市民の会

京都、滋賀、大阪、三重の知事などに要請

京都府知事 山田 啓二 様
滋賀県知事 嘉田由紀子 様
大阪府知事 橋下 徹 様
三重県知事 江畑 賢治 様
宇治市長 久保田 勇 様

 宇治市民の生命・財産・生活に危険をもたらす「天ヶ瀬ダム再開発事業=430億円の巨大放水路トンネル建設」の中止・見直しを改めて要請する。
    
                                       2008年11月25日
                                          宇治・防災を考える市民の会 代表 志岐 常正

 京都、大阪、滋賀、三重の4府県知事は、2008年11月11日、国土交通省近畿地方整備局が計画している淀川水系の4ダムについての意見を共同で表明した。その中には大戸川ダム建設に反対する内容が含まれており、「地域のことは地域で決める」地方自治の姿勢の具体化として評価する意見が、一般に多いようである。しかし、ことはそう簡単ではない。問題は大戸川以外の3ダムについては建設容認を明確にしているからである。

 我々「宇治・防災を考える市民の会(略称)」は、かねて宇治川に関わる諸問題につて、宇治市民の立場から検討を進めてきた。その結果少なくとも宇治川に関する限り、国交省の現在の整備計画がずさんなものであり、とくに天ヶ瀬ダムの放流量”増強”計画にいたっては、宇治市民の生命を危険にさらし、生活環境に重大な結果をもたらすものであることを確信するに至った。我々はこのことを近畿整備局やそれに属する関係河川事務所、京都府、宇治市などの行政当局に伝え、その確信の理由を具体的に説明し、行政がその内容を判断に生かしてもらうことを要請、期待した。この内容は、当然ながら、それぞれの担当者の約束どおり、それぞれの首長にも伝えられた筈である。

 しかし、今回の4知事の言明は、この我々の期待に全く反している。そうして、「流す水量に関する上下の利害の調節に最も苦労した」と報じられているあたり、宇治川問題の現状、実態についての我々の指摘を、はたしてどこまで検討し、理解しようとしたのか疑われる。

 河川を含め、国土整備に関する意見が立場によって違うことはあり得る。その違いが何によるものであるかを明らかにし、問題の解決を目指すためには、情報の共有が必要である。その際には地元に住む住民の検討・研究結果を聴き理解することが何よりも重要である。今回の4知事の判断に際しては、この必要不可欠のことがないがしろにされたと言わざるをえない。これは民主主義の基本に関わることであり、知事たちが唱えている”地方分権”の実際の意図を疑わせるに充分である。

 ことは住民の100年200年にもわたる安全にと生活に関わる。過ちは改められねばならない。我々は4知事がこのことに気づき、反省し、我々住民の怖れるところ、明らかにしたところを聴くことを、ここに改めて強く要求するものである。

 あわせて、宇治市長をはじめ流域自治体首長等がここにきて、「ダム推進の要請」を強めている。11月21日には国に「ダム推進の要望書」を提出し、金子国交相から「知事より前に、地元の声を聞きたかった。」とエールを受けている。
しかしながら、河川整備計画をめぐっては、整備局が設置した「塔の島付近の検討委員会」(委員長 芦田和男・京都大学名誉教授)に、宇治市は委員を出していながら、その委員は一度も会議に出席せず、代理参加者からもいっさい発言もされなかった。意見を言うべきときに何も言わず、後から国の言い分だけを鵜呑みにした行動・発言は、あまりにも無責任と言わざるをえない。

 9月27日、国交省近畿地方整備局の諮問機関である淀川水系流域委員会は、第82回委員会で意見書案をまとめたが、その中で天ヶ瀬ダム再開発事業は、@淀川における流量増対策としての効果は限定的であり、緊急性は低い、A天ヶ瀬ダム再開発は、三川合流点の水位の状況によっては、宇治川の安全度を低下させる、と述べている。

宇治川1500トン毎秒の計画を強行すれば景観、環境がさらに破壊されることがあまりにも明らかになったことから、「塔の島付近の検討委員会」(委員長 芦田和男・京都大学名誉教授)は議論を棚上げにしたまま休会になっている。

新聞報道によれば、11月21日に国の文化審議会は、宇治市の宇治川や周辺市街地の景観を重要文化的景観に選定するよう塩谷文部科学相に答申した。対象は世界遺産の平等院、宇治上神社を含む宇治川周辺や周辺市街地、周辺の茶園などで、自然と歴史、伝統産業が複合的に結びついた景観として評価されたとのことである。

このような状況の下で、宇治橋周辺の景観を破壊する1500トン放流は到底認められるものではない。まして、河川法の主旨や法定協議会である流域委員会の判断も理解せず、大戸川ダム1080億円、天ヶ瀬ダム再開発事業430億円など莫大な負担を国、自治体、住民に押し付ける流域自治体の首長等の行動は、容認できない。宇治市長をはじめ流域自治体首長は「ダム推進の要望書」を取り下げるべきである。


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